2020年夏に発売された、Canon の最新フルサイズ・ミラーレス・カメラ「EOS R5」と「EOS R6」。カナダでも発売開始からしばらく在庫切れが続いていましたが、11月を過ぎたころからようやく待たずに購入できるようになってきました。
結局、僕は12月の初旬に R6を購入しました。店を選ばなければ、もっと早く購入できたのですが、金額面において特定の店で購入したかったということ、最後の最後まで他の候補機種が頭から離れず、決断が12月になってしまったというわけです。
今回は、僕が今までどんなカメラをどのような目的で使ってて、なぜ EOS R6 を選択したのか、そして実際に手にした感想について、今購入を迷っている人に向けて書きたいと思います。
コンテンツ
EOS Rシリーズのスペック比較
Canon のミラーレス一眼、EOS Rシリーズの比較表です。まずは各モデルの位置付けとスペックを理解しましょう。
EOS RP | EOS R | EOS R6 | EOS R5 | |
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写真 | ||||
発売日 | 2019/3/14 | 2018/10/25 | 2020/8/27 | 2020/7/30 |
金額(税抜き) | 130,000円 | 195,000円 | 305,000円 | 460,000円 |
センサー | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ |
有効画素数 | 2620 万画素 (6240×4160) | 3030 万画素 (6720×4480) | 2010 万画素 (5472×3648) | 4500 万画素 (8192×5464) |
映像エンジン | DIGIC 8 | DIGIC 8 | DIGIC X | DIGIC X |
常用ISO感度 | 100 - 40000 | 100 - 40000 | 100 - 102400 | 100 - 51200 |
連写 | 5/秒 | 8/秒 | 12 - 20/秒 | 12 - 20/秒 |
AF人物検出 | 瞳/顔 | 瞳/顔 | 瞳/顔/頭部 | 瞳/顔/頭部 |
AF動物検出 | × | × | 瞳/顔/全身 | 瞳/顔/全身 |
手ブレ補正 | 電子補正(動画) | 電子補正(動画) | ボディー内5軸 | ボディー内5軸 |
測距輝度範囲 | EV -5~18 | EV -6~18 | EV -6.5~20 | EV -6.0~20 |
液晶モニター | 3.0 型(3:2) 約104 万ドット | 3.15型(3:2) 約210万ドット | 3.0型(3:2) 約162万ドット | 3.2型(3:2) 約210万ドット |
タッチパネル液晶 | ○ | ○ | ○ | ○ |
バリアングル液晶 | ○ | ○ | ○ | ○ |
8K動画 | × | × | × | ~ 30P(RAW) |
4K動画 | ~ 25P(IPB) | ~ 30P(ALL-I) | ~ 60P(IPB) | ~ 60P(ALL-I) |
フルHD | ~ 60P(IPB) | ~ 60P(ALL-I) | ~ 60P(IPB) | ~ 60P(ALL-I) |
ハイフレームレート | × | ~ HD 120P(ALL-I) | ~ フルHD 120P(ALL-I) | ~ 4K 120P(ALL-I) |
最高記録画質 | 4:2:0/8bit | Canon Log 4:2:2/8bit | Canon Log 4:2:2/10bit | Canon Log 4:2:2/10bit |
連続動画撮影可能時間 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
カードスロット | SD x 1 | SD x 1 | SD x 2 | SD x 1 CF x 1 |
本体重量 | 440 g | 580 g | 598 g | 650 g |
外装素材 | ポリカーボネート | マグネシウム合金 | ポリカーボネート | マグネシウム合金 |
HDMI タイプ | mini HDMI Type C | mini HDMI Type C | micro HDMI Type D | micro HDMI Type D |
EOS R シリーズ モデル比較 | Canon 公式サイト
https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/product/eosr/comparison/
今回購入したカメラとレンズ
今回僕が一緒に購入したカメラとレンズのセットです。北米では11月末と12月末に年に一度の大セールがあり、少しだけ割引された金額で購入することができました。
- EOS R6 Body(
$3499-> $3,299 CAD) - RF35mm F1.8 MACRO IS STM(
$649-> $599 CAD) - マウントアダプター EF-EOS R($129 CAD)
EOS Rシリーズに EFレンズを装着するためのアダプター
購入した店
[豆知識]
BC州などHST 税を採用していない州から、こちらの店のオンラインでオーダーすると州税(BC州はPST7%)がチャージされず、消費税5%(GST)のみで購入できます。特定の州内のみで運営する店が、その州に存在しない税を採用している州からオーダーを受けた場合、GST5%だけしかチャージしないというポリシーは、HST税採用の州/GST税のみの州だけを拠点とする店のオンラインストアで見かけます。
RF35mm F1.8 MACRO IS STM レンズはコスパ最高
STMレンズは、USMレンズに比べればフォーカスのスピードは遅くなりますが、普通の撮影で使う分にはまず気になりません。また、動画撮影におけるフォーカス音についてですが、動画撮影時はフォーカスのスピードが写真撮影時より遅くなるため、思ったよりは気にならないと思います。無音のシーン撮影時、使用するマイクによってはモーター音をかすかに拾ってしまう可能性がある程度だと思っておけば良いと思います。
多少気になる面はあるにしても、「安い」「軽い」「高画質」「手振れ補正付き」の4拍子揃った超コスパに優れたレンズです。今現時点、RFレンズのラインナップが十分ではない中、無理に高いLレンズを購入せず、EOS R5/R6 購入時、まずはこのレンズを一緒に購入しておくのもアリだと。
僕は最初 「EOS R6 + RF 24–105mm F4-7.1 IS STM」のレンズキットの購入も検討しましたが、「EOS R6 ボディ」にこの「RF35mm F1.8」をバラで購入した方が汎用性が高いと思い、この組み合わせを選びました。
EOS R6 の特徴
EOS R6 は「フルサイズミラーレスの新標準」と位置付けられているバランスのとれたハイアマチュア向けモデルです。
- Canon のデジタル一眼レフの王者「EOS-1D X MarkIII」 のセンサーを専用にカスタマイズした高感度・高速性能に優れたCMOSセンサー搭載。
- デュアルピクセル CMOS AF IIによる高速・高精度なAF。
- 常用ISO最高102400(動画撮影時 51200)により暗所でもノイズの少ない高画質撮影が可能。
- ボディー内5軸手振れ補正とRFレンズの組み合わせにより、最大8段の手ブレ補正。
- 最高4K 60P の動画撮影。
- SD カード × 2 のダブルスロット。
EOS R6 は 6D系 or 5D系の後継機?
一般的には、「EOS R5」 が 「EOS 5D」系、「EOS R6」 が「EOS 6D」系 の位置づけ、またはそれら現行モデルの後継機などと言われたりしますが、性能面や費用面で見ると一概にそうとも言えないような気がします。
たとえば、「5D Mark IV」 の同等機種/後継機 が 「EOS R5」だとしたら、そもそも金額が高過ぎるし、画素数など含むスペックが一気に高くなり過ぎです。一方、「5D Mark IV」 から 「EOS R6」 へ乗り換えの場合、
- 画素数が3040 万画素 → 2010 万画素に下がる
- カードスロットが SD×1、CF×1 → SD ×2になり、CF(CompactFlash)が使用できなくなる
- 外装がマグネシウム合金 → ポリカーボネート樹脂になってしまう
など、スペックが落ちてしまうため後継機とは言えません。僕の場合、「5D Mark IV」を飛ばして「5D Mark III」→ 「EOS R6」ですが、それでも上記の点においてはスペックダウンと言えざるを得ません。
EOS R5/EOS R6 は上位/下位機種ではない
EOS R5/EOS R6 で迷った場合、お金に糸目をつけないなら「EOS R5」にしておけば良いのかというと実はそういうわけでもありません。
「EOS R6」の画素数は 2010万、「EOS R5」は 4500万と、2倍以上の差があります。画素数は高ければ高いほど良いわけではなく、高画素になればなるほど逆に暗所に弱くなります(高感度撮影でノイズが乗りやすくなる)。「EOS R6」は、画素数を抑えることでISO 102400 という超高感度撮影を可能にしているのです。Canon のデジタル一眼最上位シリーズ「EOS-1D X」の2020年発売の最新機種「EOS-1D X MarkIII」の画素数が2010万画素で抑えられている理由もここにあります。
ちなみに、2020年秋に発売された、映像クリエーターに衝撃を与えた暗所撮影に強い、現時点の最強動画一眼カメラと言われている Sony の「a7S III」は、1210万画素 と極端に画素数を抑えています。
要するに、「EOS R5」と「EOS R6」というのは、画素数の極端な違いを見てもわかるとおり、上位/下位機種という位置づけではなく、使い方、目的が異なる機種だということです。
新しいカメラを購入しようと思った理由
僕が今まで使用していたカメラとレンズたちです。今となってはかなり古いカメラですが、僕が必要とするレベルの写真であればどちらも全く不満なく撮影できるので、これからもまだまだ使っていくつもりです。
カメラ
- EOS 5D Mark III
- EOS 5D Mark II
レンズ
- EF16-35mm F2.8L II USM
- EF24-70mm F2.8L USM
- EF70-200mm F2.8L IS II USM
既に2つの一眼レフカメラがあって、しかも写真の質に不満がないのにも関わらず新しいカメラを購入しようと思った大きな理由は下記です。
- Full HD 60p or 4K 30p 以上の動画撮影が可能なカメラが欲しかった
- 動画撮影におけるオートフォーカスが欲しかった
- 動画撮影における手振れ補正が欲しかった
- ミラーレスの波に乗ってみたかった
結局、動画の撮影をするようになったことが、新しいカメラの購入を検討した一番の理由というわけです。
候補に挙がったカメラたち
僕が求める動画基準(FHD 60p/4K 30p 以上)は、最近のカメラでは決して高過ぎるスペックではないので、多分大抵のカメラで満たすことができます。しかし僕の場合、動画を撮る時は必ず写真も撮るので、写真と動画の両方が僕の基準を満たしているカメラが理想です。そこで挙がったのが下記のカメラたち。
基本的には、既に持っている Canonのレンズ、バッテリーが使用できることから、Canon で選ぶ気持ちだったのですが、基準を少し動画に傾けると、どうしても Panasonic に目が行ってしまい、最後の最後まで悩みました。
- Canon EOS R6
4K 以上の動画連続撮影でオーバーヒートする問題とボディ素材が気になる。 - Canon EOS 5D Mark IV
既に古い機種のため、リーズナブルだが動画を視野に入れると少し物足りない。 - Panasonic DC-S5
純正レンズの選択肢がまだ少ない(例:広角&明るい単焦点レンズがない)。オートフォーカスの精度について不満を言う人が多く気になる。 - Panasonic Lumix S1
S5 同様、レンズの選択肢とオートフォーカスが気になる。 - Canon EOS R(予備)
性能面では十分&リーズナブルだがボディ内手振れ補正がない。マルチファンクションバー の評判が良くないので気になる。EOS Rシリーズなら「EOS R6」が有力。EOS R6 を購入した後の予備機として検討。
ちなみに、EOS R5 は自分にはオーバー/不要スペック&高額過ぎるので最初から視野に入れていません。また、動画性能を重視するなら、現時点、最強のカメラと言われる Sony a7S III ですが、僕はカメラに限らず、 Sony製品のデザインやユーザビリティが個人的に好みではないので、金額に関わらずSony 製品全般において候補に挙がっていません。
Canon EOS R6 | Canon EOS 5D Mark IV | Panasonic Lumix DC-S5 | Panasonic Lumix DC-S1 | |
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写真 | ||||
発売日 | 2020/8/27 | 2016/9/8 | 2020/9/25 | 2019/3/23 |
金額(税抜き) | 305,000円 | 324,500円 | 250,000円 | 345,268円 |
センサー | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ | 35 mm フルサイズ |
有効画素数 | 2010 万画素 (5472×3648) | 3040 万画素 (6720×4480) | 2420 万画素 (6000×4000) | 2420 万画素 (6000×4000) |
常用ISO感度 | 100 - 102400 | 100 - 32000 | 100 - 51200 | 100 - 51200 |
AF人物検出 | 瞳/顔/頭部 | 顔 | 顔/瞳/人体 | 顔/瞳/人体 |
AF動物検出 | 瞳/顔/全身 | × | 全身 | 全身 |
手ブレ補正 | ボディー内5軸 | × | ボディー内5軸 | ボディー内5軸 |
液晶 | 3.0型 バリアングル タッチパネル | 3.2型 固定 タッチパネル | 3.0型 バリアングル タッチパネル | 3.2型 3軸チルト タッチパネル |
4K動画 | ~ 60P 4:2:2 10bit | ~ 30P 4:2:2 8bit | ~ 30P 4:2:2 10bit ~ 60P(APS-C) 4:2:0 10bit | ~ 60P 4:2:0 8bit 4:2:2 10bit(有料) |
ハイフレームレート | フルHD 120P | HD 120P | フルHD 180P | フルHD 180P |
Log撮影 | Canon Log | Canon Log(有料) | V-Log | V-Log |
連続動画撮影可能時間 | 30分 | 30分 | 無制限 *4K 50P 以上& 4K 10bit は30分 | 無制限 *4K 60p は30分 |
カードスロット | SD x 2 | SD x 1 CF x 1 | SD x 2 | SD x 1 XQD x 1 |
本体重量 | 580 g | 800 g | 630 g | 899 g |
外装素材 | ポリカーボネート | マグネシウム合金 | マグネシウム合金 | マグネシウム合金 |
HDMI タイプ | micro HDMI Type D | mini HDMI Type C | micro HDMI Type D | HDMI Type A |
EOS R6 を実際に使った感想
結論としては買ってよかった、と断言できます。もちろん後悔もしていません。しかし100%不満がないわけではないので、満足点と不満点についてまとめてみます。
○ 満足点
- 静止画/動画の画質
一緒に買った非Lレンズ「RF35mm F1.8」との組み合わせですら、「EOS 5D Mark III」 + L レンズと同等、またはそれ以上の描写性能を感じる - 静止画撮影の手振れ補正の精度
薄暗いところでも失敗なくブレずにシャープな写真が撮れる - AF人物/動物精度
人/動物のオートフォーカス精度はかなり高く、動画撮影おいては完全に自動で任せられる - 操作性が高い/メニューが分かりやすい
EOS 5D 系とほとんど同じで、分かりやすく操作しやすい - 軽い/小さい
EOS 5D など一覧レフと比較するとかなり軽く小さく持ち運びがすごく楽
× 不満点
- バッテリーの持ち
ミラーレス全体で言えると思いますが、一眼レフに比べるとバッテリーの減りが早い - 電子ファインダー
初めてのミラーレスカメラの僕感覚では、“一眼レフの光学ファインダーに比べると”、スムーズさに欠ける - 動画の手振れ補正精度
YouTube のレビューなどを見ている限り、動画の手振れ補正に関しては「Sony a7S III」ほどは良くない - 外装がポリカーボネート樹脂
カメラのスペックが高い分、外装のコストを削減したという事情は置いておいて、10万円安い「EOS R」ですらマグネシウム合金。この価格帯で外装にポリカーボネート樹脂を採用したのは僕的には一番の不満。カメラ自体のスペックとは関係ないものの、触った感じの高級感/重量感が全然違うのと、そもそも気持ちの問題が大きい。
一番の不満と挙げた「外装がポリカーボネート樹脂」という点に関しては、気持ちの問題だけで、写真や動画の結果には影響しないので、EOS 5D やその他マグネシウム合金ボディ機種からの移行という人であれば、そもそも全く気になるポイントにはならないでしょう。
また、当初から言われている4K+長時間撮影でのオーバーヒート問題についてですが、僕が撮影する動画の種類のほとんどは、
- FHD 1080 でのインタビューなどのトーク系の撮影
- 4K 30/60p でのBロール系の短時間動画
のため、全く問題になることはなく、心配するまでもないことだと感じました。
結論としては、とにかく超高画質でプロフェッショナルな画像も動画も撮れる万能なカメラで、EOS 5D の後継機として見ても十分満足できると思います。
サンプル写真
今回 R6 と一緒に購入した RF 35mm F1. 8 のレンズと、EOS 5D で使っていたEF 16-35mm f/2.8 レンズで何枚かサンプル写真を撮ってみました。
EOS R6 + RF 35mm F1. 8 Macro IS STM
一緒に購入した RF レンズのサンプル写真。
バンクーバー市内
EOS R6 + EF 16-35mm f/2.8L II USM
購入した「マウントアダプター EF-EOS R」経由で装着した「EF 16-35mm」 レンズでの写真。オートフォーカスも全く問題なく動作するので全く問題なく使えます。
サンプル動画
FHD 1080/30p + Canon Log ON の設定で撮影し、適当なLUT をあてています。
Autofocus test | Canon EOS R6 + RF 35mm F1.8 Macro IS STM
急に近距離に顔が来た時を除き、それほどフォーカスのスピードが気になることはありませんでした。
Autofocus test | Canon EOS R6 + EF 16-35mm f/2.8L II USM
上の「RF 35mm F1.8」と比べるとやはりフォーカスのスピードは速いですが、画質的にはそれほど差がないように見えます。
Canon EOS R6 | Low Light IBIS Test | RF 35mm F1.8 Macro IS STM
EOS R6 にミニ三脚を取り付け、手持ちで撮影しています。特にライトなどは一切使っていません。ゆっくり動いたつもりでしたが、動画の中で極端なブレが見えるので、動画の手振れ補正が思ったより期待できないと感じました。
しかし、画質に関しては、想像よりも奇麗に撮れて驚きました。